AirPods Pro 2は補聴器代わりになる?難聴の私が試した設定とリアルな感想
ユーミンの名曲『中央フリーウェイ』。 この曲のイントロが、実は左右に激しくパン(音が移動)しているなんて、今まで知らなかった。
実は私は右耳だけの難聴。これまではステレオの音楽を聴いても、右耳から鳴っている音はごっそり抜け落ちていて、左耳だけでなんとなく全体像を脳内補完していたことになる。
AirPods Pro 2に「ヒアリングエイド(補聴器)」機能が追加されてから、もう1年以上が経つ。 実際に難聴の私がこの機能を1年間使い倒してみて、補聴器としてどうなのか、どう役に立つのかが見えてきた。
結論から言うと、「専用の補聴器の代わりにはならないが、音楽や動画を楽しむためのツールとしては最高」。これに尽きる。 補聴器ユーザーの視点から、その理由と実際の使い分けについて、正直なところを書き残しておく。
AirPods Pro 2 ヒアリングエイド機能のメリデメ
1年使ってみて、専用の補聴器と比べて気に入った点・微妙な点は次のとおり。

補聴器として使えるか?設定方法とヒアリングエイド機能の実力
初期設定と調整は自宅で5分。「Appleヒアリングチェック」の手軽さ
使い方は超簡単。 まず、iOS 18.1以降のiPhoneとAirPods Pro 2があれば、「Appleヒアリングチェック」機能を使って5分くらいで聴力検査ができる。








耳鼻科等で測定したオージオグラム(聴力図)を手入力する方法もあるけれど、家で思い立った時に測れる手軽さは大きい。
精度検証:病院の検査結果(オージオグラム)との比較
実際、この簡易検査がどれくらい正確なのか。耳鼻科でやってもらった「標準純音聴力検査」の結果と比較してみた。



健聴な左耳で5dB、難聴が入ってる右耳で10dBの差はある。細かい部分で違いはあるし、全く一緒とは言わないけど、傾向は十分捉えられている。自分の耳のスペックを把握する分には十分だ。
それに、家で手軽に検査できることで、年に1回でも良いから気が向いたときに「セルフチェック」できるのがデカい。
個人的な話だが、私は湿性耳垢(アメ耳)で、油断すると耳垢が詰まって聴力が落ちる。そうすると補聴器のフィルターもすぐ詰まる。
過去にそれに気づかず「なんか聞こえ悪いな……」と放置してしまい、2年後くらいにメガネ屋さんの補聴器フェアで「耳掃除すりゃ結構変わると思いますよ」と言われ、耳鼻科に行ったらそれだけで10dBくらい改善した、なんて情けない経験もある。
ちなみに、急に耳が悪くなったと感じたら、皆さんは絶対スルーせずすぐ病院へ行ってください。早ければ治ることもあるらしいので。

こういう「日々の変化」や「不調」を、病院に行かずとも数字として記録できるのは、精神衛生上かなり良いことだと思う。

片耳難聴の私が「音楽」を取り戻した瞬間
右耳から「音」が聞こえる違和感と感動
ヒアリングエイド機能で自分の難聴度合いに合わせて音量を補正して音楽を聞けば、作者が意図したステレオ感で音楽を楽しむことができる。
最初に書いた『中央フリーウェイ』の話だけど、イントロで左右に激しくパンしている音に気づいたときは、純粋に感動した。
ああ、みんなにはこういう景色が見えていたのか

もちろん、補聴器をつけて、その上からヘッドホンを被れば同じことはできる。でも、正直それは面倒くさい。イヤホン単体で、自分に最適化された音が鳴る。これだけで十分買った価値はあった。
それでも「専用の補聴器」が手放せない理由
じゃあAirPodsがあれば高い補聴器はいらないかと言うと、そうはならなかった。1年使ってみて、結局「補聴器は専用のものの方が秀でている」と感じる点は多い。

バッテリー問題と「仕事中に音楽?」という誤解
まず、電池持ちが数時間しか無いので1日中つけっぱなしにするには向かないこと。
それと、職場などでは音楽を聞いていると誤解されそうで使いがたい。
いくら「これは補聴器機能です」「外音取り込みです」と弁明したところで、はたから見ればただのイヤホン。社会的なTPOとして、まだAirPodsはイヤホンですよ。
空間把握における「自然な増幅」との決定的な差
一番違うのは音の聞こえ方。
専用の補聴器なら、音を自然に増幅してくれるので、例えば左前で鳴っている音を「左前から鳴っているな」と自然に認識できる。
対してAirPodsだと、「右耳でも増幅して聞こえたな」のように、音像の把握が変になる感覚がある。デジタル処理で無理やり持ち上げている感というか、脳がちょっと混乱する感じ。
流石に、耳穴の型を取って作った専用機には敵わんね。
注意:AirPods Proで難聴になるリスクはある?
補聴器代わりにAirPodsを使うとなると、「長時間イヤホンをつけっぱなしにして、逆に難聴が悪化しないの?」と心配になる方もいると思います。
結論から言うと、「大音量で音楽を聴き続ければ当然リスクはあるが、機能を正しく使えばむしろ耳を守るツールになる」というのが私の意見です。
一般的に「スマホ難聴(イヤホン難聴)」と呼ばれるものは、周囲の騒音にかき消されないよう、無意識にボリュームを上げすぎてしまうことが主な原因だと言われています。しかし、AirPods Pro 2とiPhoneの組み合わせなら……
- 強力なノイズキャンセリング: 電車内などのうるさい環境でも、ノイキャンを使えば周りの雑音をカットしてくれます。小さな音量でもはっきりと音が聞こえるため、無駄にボリュームを上げる必要がありません。
- iPhoneの「ヘッドフォン安全性」機能: iPhoneの「設定」>「サウンドと触覚」>「ヘッドフォン安全性」から、「大きな音を抑える」をオンにして上限(例:80〜85デシベルなど)を決めておけば、危険な大音量をiPhoneが自動的にブロックしてくれます。
つまり、「外部音取り込み(補聴器代わり)」と「ノイズキャンセリング(耳の保護)」を場面に合わせて使い分けることで、耳への負担は最小限に抑えられます。
とはいえ、耳を休ませる時間は絶対に必要です。「会議や外出時の必要な時だけ装着する」「家の中の静かな場所では外す」など、メリハリをつけた使い方が大前提ですね。
私はむしろ、AirPodsが無かった時代に、普通のイヤホン・ヘッドホンで爆音鳴らしてたので難聴になりましたし……

まとめ:医療機器ではなく「エンタメ加速装置」として
総じて、3万円ちょいで買えるAirPodsが簡易的にせよ補聴器の代わりになるのは素晴らしいことだし、軽度難聴の人が自分の難聴に気づくきっかけにもなると思う。
ただ、私の場合は「補聴器を買うか、AirPodsを買うか」迷うというより、以下のような使い分けに落ち着いた。
- 普段の生活: 専用の補聴器(自然な聞こえ・長時間バッテリー)
- メディア鑑賞: AirPods Pro 2(ステレオ感・手軽さ)
なにより、補聴器を持っている私に取っては、音楽をより楽しく聞くためのツールとして欠かせないものになった。 補聴器つけて音楽聞くよりもダイレクトに補正済みの音が聞けるの楽で好き。

